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学長が語る 障がい児保育

学長が語る 障がい児保育

第7回

「ボーダー」の子どもと集団保育

一般には、障がいが重いほど保育が難しいと思われがちですが、私自身は、障がいの軽い、いわゆるボーダーの子どもほど保育が難しいと感じています。
その理由は、2つあります。
1つは、まわりの仲間がその子を対等な存在として認識し、接するということです。障がいが重い子どもに対しては、まわりの仲間は「できなくてもいい」と受け止めてくれるのですが、いわゆるボーダーの子どもに対しては、「なんでできないの」という受け止めになりがちなのです。
もう1つは、自己認識がしっかりしているということです。これは、いうまでもなく素晴らしいことなのですが、難しさを生む原因でもあります。具体的には、「失敗したくない、恥をかきたくない」との思いから、やればできそうなことにも尻込みをしてしまうことがあるということです。
このように、いわゆるボーダーの子に対しては、とてもデリケートな保育が必要になってくるように思います。

いわゆるボーダーの子どもの保育で大切なことは、何か。3つあるように思います。
1つは、まわりの仲間たちとの関係です。自分ができないことはためらいなくまわりの仲間に援助を求めることができ、また、まわりの仲間も自然にそれに応えるという関係です。その子を受容する保育者の態度がまわりの子どもたちに浸透していくと、年長児クラスになって、そのような仲間関係が生まれてくるように思います。
2つ目は、その子の居場所です。特に、年長児クラスになると、仲間の遊びを共に楽しむことができずに、一人でふらふらする場面が見られることがあります。そのような場合には、年中児クラスや年少児クラスの中に居場所を見つけてあげることも必要になります。
3つ目は、「生きることは良いことだ、楽しいことだ」という思いをいっぱいさせてあげることです。いわゆるボーダーの子どもの行く手には、辛いことがたくさん待っているかもしれません。それでも、集団保育の中で「愛された、大切にされた」という体験をたくさんしていれば、それが、「折れることなく人生を歩んでいく力」になるのではないかと思います。